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2010年12月01日

★シリーズ『会社って誰のもの?』4-2~最終回 共同体企業の実現には「会社法」と「労働法」の統合が必要~

今回のシリーズでは、中世からの歴史を振り返り、現代の会社法につながる企業形態の変遷を中心に追いかけてきました 😀
資本主義社会という体制下において、1970年まで一貫して市場拡大という外圧環境において、「資本集約力」と「企業統治(資本序列に基づく支配体制)」というシステムを備えた株式会社 という形態が最先端の可能性となり、現代においては主流となっています。

(画像はコチラから)
しかし、400年にわたって発展してきた株式会社 も、「1970年貧困消滅→私権圧力▼→私権収束▼(+序列原理▼)=豊かさ期待の消滅→企業の統合不全△」という流れの中で、売り上げ低下、企業不祥事、社員の活力低下など様々な問題が噴出してきています。
時代は、社会を取り巻く圧力が私権圧力から共認圧力へと転換し、それに伴い、人々の意識も最大の充足が私権獲得(の充足≒物的欠乏を満たすこと)から、共認充足(人と人との共感や課題共認での充足≒共認欠乏を満たすこと)へと変わりつつあります。
そして、そういった時代や人々の意識変化に企業が適応できなくなっているのだといえます。では、なぜ、そうなってしまったのか? エピローグでは、その原因から考えてみたいと思います 🙂
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■会社法も労働法もともに私権獲得が目的
  
 前回4-1の「協同労働の協同組合」での制度化を実現する意味でも、大きな壁となるのが労働法(代表的には労働基準法、労働組合法、労働関係調整法の労働三法)だといえます。実際に、「協同労働の協同組合」は、労働基準法逃れの労働強化につながると懸念する声もあります。もう一度、前提として労働法の概要を改めて確認してみましょう。

◆労働三法
労働組合法(1945年)
* 労働組合法は,労働者が使用者との交渉において対等の立場に立ち,労使間で団体交渉を行い,労働協約を結び,争議行為を行うことを保障する法律である。
労働関係調整法(1946年)
* 労働関係調整法は,労働争議を予防したり解決したりすることを目的としている法律。内容は,主に斡旋,調停,仲裁,争議行為の制限禁止を定めている。
労働基準法(1947年)
* 労働基準法は,労働条件の最低基準を定めた法律。内容としては,労働者が不利な条件とならないように,原則,賃金,労働時間,休息,休暇などについて定めている。原則は第一章にまとめられており七つある。
1. 労働条件の原則
* 労働条件は人たるに値する生活を営むための必要を満たしていること
2. 労使対等の原則
* 労働条件の決定は労使対等であること。結果は双方とも遵守すること
3. 均等待遇の原則
* 労働者の国籍・信条・社会的身分により労働条件を差別しないこと
4. 男女同一賃金の原則
* 女子であることを理由に賃金について男子と比べて差別しないこと
5. 強制労働禁止の原則
* 暴行・脅迫などにより労働者が欲しない労働を強制しないこと6. 中間搾取排除の原則
* 他人の就業に介入して利益を得ないこと(法律による場合を除く)
7. 公民権行使の保障の原則
* 労働者が労働時間中に公民としての権利行使に必要な時間の請求をした場合に使用者は拒否できない
出典:労働三法

上記を見ると、労働三法はすべて戦後の’45~47年に制定され、基本的には60年以上も前の時代の内容のままだといえます。圧倒的に強い権力(私権の強制圧力に基づく)を持つ使用者(企業経営者)と弱者である労働者との対比となっており、まさに近代(明治時代)~戦前・戦後の貧困の時代における外圧環境が前提としての法律であることがわかります。
ちなみに、会社法は同じく明治時代から続く法体系ですが、2005年に大きな改正(106年ぶり→1-3 新会社法改正の背景は?~ 参照)がなされています。しかし、それは、投資家(特に外人投資家)にとって都合の良い、M&Aによって企業を商品のように売買しやすくすることが中心的な目的となっています。つまり、企業を私権の対象としていく流れにあるのだといえます。

現在の「会社法」「労働法」はともに私権獲得を目的とする法体系
——————————————————–
■近代法の体系と労働法の位置
               ┏公法=憲法/刑法/行政法/訴訟法/国際法
               ┃
      ┏━市民法━┫
      ┃        ┃
      ┃        ┗私法=民法/商法/会社法
近代法━┫     
      ┃
      ┃
      ┗━社会法=労働法/社会保障法/環境法等
※目的の違い
  市民法=「個人の自由」の実現
  社会法=「生存権」の保証

参照:「近代法の法体系と労働法の位置
——————————————————–
 上記によると、共に企業の周辺にある法律ではありますが、会社法は市民法の私法の体系に属している法律であり、労働基準法などの労働法は社会法の体系に属している法律であって、そもそも出自も背景も違う。
 よって、両者の間に整合性も、関連性も少ないのは構造的には当然なのかもしれないと思いました。
 そして、近代市民法は「それまでの封建社会を否定して、資本主義社会の発展を保証しようという意図のもとで生み出されたもの」であり、あくまで資本主義の発展、つまりは市場拡大(そして、それに伴う個人の私権拡大)を実現することが目的なのである(要は、「個人の(私権獲得の)自由の実現」が目的)。
 かたや、労働法は「労働者の生活や生命を保障する」であり、「生存権」の保証が目的である。そのために、弱者である労働者を守るための労働基準法や労働組合法などの法律が制定されている。しかし、これは社会背景として、工業生産社会における圧倒的な力(資本力)を有する資本家と、貧困の圧力下において労働を提供して生活せざるを得ない弱者としての労働者という関係が前提として存在する。
 こうしてみると、会社法は資本主義(市場拡大が絶対)における資本家の私権拡大を目的としたもので、労働法は貧困の圧力下における労働者の私権(生存していくための最低限のお金や環境)を守るためのものだといえる。
 共通しているのは資本主義社会における私権の確保や拡大を目的としていることである。
 しかし、現在の日本は「’70年に貧困が消滅→私権圧力▼→私権収束▼(お金や身分、地位への執着が低下する)→共認欠乏が生起(やりがいや期待に応えることが活力源となる)→経営や労働においても私権獲得よりも社会期待に応えることが充足」へと転換している。
 よって、
①会社法では、私権獲得の為の会社への出資や経営ではなく、事業を通じて社会の期待に応える(社会的問題を解決し必要とされる存在になる)企業組織の設立
②労働法では、私権獲得のための労働ではなく周りや顧客の期待に応えてやりがい充足を感じられる労働のあり方をめざす労働形態の制定(集団課題=経営への参加)

などを目的とした法律が制定されてもいいと思います。
 それを阻害しているのは、所有と支配のみで労働者の参画を前提としない会社法と、雇われることが前提(よって、出資・経営・労働の協働的労働が想定されてない)で、企業経営をいう視点が欠落して権利主張に留まっている労働法だといえます。

 
■民主主義・平等原則に基づく「協同組合」という組織形態の限界性
 自主管理共同体(出資・経営・労働の三位一体の共同体)という流れで見れば、「協同労働の協同組合」には大きな可能性を感じます。
しかし、労働者の雇用を守ることが主たる目的とされる「協同労働の協同組合」でも、まだ次代の企業形態としては条件が不足していると思われます。
世界でもっとも成功したと見られているスペインのモンドラゴン協同組合においても、その統合限界の萌芽は見て取れます。それは、平等を組織原則とする「協同組合」という組織形態における限界性ともいえます。

スペインにおける社会的企業登場の背景

>一方、巨大企業に成長したモンドラゴンは、労働者(=資本家)が多くなりすぎて会社として統一した方針を維持できないという壁にぶつかっている。このところはスペイン経済が悪化し、市場競争に勝っていくためには、組合員以外の非正規社員も雇い、経営が悪化した場合にはレイオフの対象となるなど、もともとの設立の思想である「労働者自主管理企業」から外れた経営も行なわれ始めている。
この事例を見て、自主管理共同体を維持していくには、会社を統合できる規模の問題、市場(私権)原理に代わる充足基盤を構築することが企業として大きな課題なのだと感じた。
「闘争集団」という認識が協同組合には欠けている
>ところで、協同組合の定義或いは理念をウィキペディアリンクで調べてみると、
—————————————————————–
○定義
協同組合は、共同で所有し民主的に管理する事業体を通じ、共通の経済的・社会的・文化的ニーズと願いを満たすために自発的に手を結んだ人々の自治的な組織である。
○価値
協同組合は、自助、自己責任、民主主義、平等、公正、そして連帯の価値を基礎とする。それぞれの創設者の伝統を受け継ぎ、協同組合の組合員は、正直、公開、社会的責任、そして他人への配慮という倫理的価値を信条とする。
—————————————————————–とある。
>すなわち、協同組合には組合員の合議制、情報公開、資本と経営と労働の三位一体といった、従来の私権序列体制を否定した共認体への移行は見られるが、私権社会を突き抜けて勝っていける集団になりうるか?と問われると何かが欠けているように思う。
モンドラゴンがぶつかった壁も、民主主義、平等といった近代思想の一部を引きずるが故に、統合限界を迎えている訳だ。
>協同労働の法制化だけでは不十分で、これらの認識を持った労働者をどれだけ組織化できるかが本物の共同体をつくるには重要だと思った。

本源期待の高まりを受けて、自分たちの働く場(組織)を自ら参加して管理していく、そこで培われる認識力・共認形成力・実現力が制覇力となっていきます。
その段階において、組織を統合する理念が相変わらず、近代思想(個人主義、自由・平等・博愛、政治では民主主義等)に染まったままでは、三位一体の組織を整えても、戦う集団としては機能しない。
 
■闘争する共同体を表す共認統合体という言葉
では、これからの意識生産時代を勝ち残って、社会に貢献し続けられる企業とはどういうものか?

闘争する共同体を表す共認統合体という言葉 
>いまだに信じられないと思うのは、私権闘争ではない本物の闘争の意味を知らないからだ。私権闘争を不動のものとして意識し、そのいやな闘争からの逃避先としての共同体を認識しているからだ。確かに、そのような幻想の共同体からは、合議制でまとまって行くとか、勝って行くというイメージは抱けない。
>しかし、共認統合体とは、徹底した現実直視の闘争集団であり、合議で統合されるとは、勝っていく為に、いかに実現可能性の高い方針を出せたかという、人材能力ヒエラルキーによる統合でもある。ここには、偽物の民主主義が作り出す、平等主義的な何でも意見を言えばよいという甘ったれた考えは無い。
>結局、企業を共同体にするには、私権統合は終わったという時代認識と、私権闘争に代わる本物の闘争(集団や社会を統合していくための共認闘争)が共認統合体を可能にするという認識が、まず必要なのだ。

ここから、いえることは、これまで述べてきた共同体企業の条件に加えて、あるいは底流に必要な要素として、時代は変わった(私権から共認へ)という認識の転換と、それに基づく事実の追求、そして意識生産という新しい生産様式のためには「自主管理共同体」がもっとも適しているという可能性への収束が必要なのだということです。

<共同体企業の条件>
①共認充足(=日常の仕事に関する社員参加の場を設ける→改善課題や提案→活力アップ)
②三方よし(=売り手よし、買い手よし、世間よし)
③「出資・経営・労働」の三位一体
④構造認識(事実の追求・時代認識・新たな可能性=答え)

これから10年、勝っていける企業は下記に集約されます。

3/28なんでや劇場レポート(3) 今後10年間は充足⇒活力を上げれば勝てる
・自分発からみんな発への転換(関係捨象、言い訳・誤魔化し、ダメ圧・説教ではダメ)
・否定から肯定視・実現への転換
・観念論から構造認識への転換

以上が、闘争過程の力を規定する根底部分。
これさえできれば、今後10年間はそれだけで十分。それができないから私権企業は潰れてゆく。
肯定視・充足をキーワードとして定着させる。具体的には、現業のミーティングでも肯定視できるポイントを固めるとか、上司も部下の肯定視ポイントを把握して指導するといった工夫はできる。しかし、肯定視・充足と言えば、女の方がはるかに発達しているのであって、女たちを中心にして充足・肯定の空気を作り出すことが必要。女たちが充足期待の空気を作り出し、男の活力を引き出す。これが男女関係再生のカギであり、同時に企業活力を上昇させる突破口である。
そのためにも、女たちの充足性こそ最大の価値なんだという認識転換が、特に男たちに求められる。

その萌芽はこれまでに紹介してきた企業や類グループに実現態としてのヒントがあります。
■共同体企業の実現には会社法と労働法の統合が必要~
最後に、もう一度、企業を取り巻く外圧と企業統合の変遷、そしてこれからの課題について図にまとめてみます。

(クリックで拡大します☆)
これまで述べてきたように、会社法は投資家や経営者の私権獲得、そして労働法は労働者の私権獲得が目的といってもよいと思います。
‘70年まで貧困の圧力が残存している時代では、投資家、経営者、労働者に共通した「豊かさ期待」という「みんな欠乏」が存在しました。戦後、国を挙げて敗戦から復興し、そのためには企業も個人も共通目標ともいえる「豊かになりたい」という想いで一丸となって働いてきました。
しかし、‘70年に貧困が消滅すると、全国民共通の「豊かさ期待」が変容し、個々人の私権欠乏(もっと儲けたい、いい生活をしたい、そのためにいい給料を得たい等)が中心となっていきます。それに伴って、投資家・経営者・労働者のそれぞれの私権追求は、当然ながら利益相反しているため、企業という集団においても共通の目的がなくなり、徐々に企業統合不全へと陥っていきます。
もはや、会社法と労働法は真逆の方向を向いており、そのギャップが企業や経営者、労働者を苦しめてしまっているのだといえます。
今後、共認原理に基づく企業統合は「自主管理」であり、その実現方向は、「出資・経営・労働」の三位一体の組織形態にあると思われます。とすれば、「会社法」と「労働法」という出自や目的の違うふたつの法体系は統合されるべく議論されていく必要があるのではないでしょうか?
よって、それを具体化するためにも、次回シリーズでは「会社法 」と並んで、企業に大きな影響を与える「労働法 」について引き続き調べてみたいと思います。
シリーズを通してお読みいただき、ありがとうございました 😀
<今までの記事>
プロローグ~ある日、突然、会社が売却されたら・・~
1.「現状はどうなっている?」
1-1 法人の実態は?~
1-2 会社制度の比較~
1-3 新会社法改正の背景は?~
2.株式会社の歴史
2-1 生産集団の変遷~ギルドとは?~
2-2 現代の企業につながる起源は?
2-3 株式会社=資本主義における最先端様式
2-4 日本における企業集団の歴史・由来
2-5 近代(明治以降)の会社形態の変遷~
3.何が問題なのか?
3-1 高度経済成長期の日本
3-2 貧困の消滅以降の企業の迷走~
3-3 これから可能性のあるいい企業って?~
3-4 「出資・経営・労働」三位一体の経営~雇われない働き方~
4.新たな可能性~自主管理共同体への潮流~
4-1 生産の場における「参画期待⇒自主管理」の潮流
4-2 共同体企業の実現には会社法と労働法の統合が必要

 

コメント

「仕事で、身近で、“やった!”と想ったことをみんなに発表するというとっても簡単なもの」。
でも、なにかのきっかけや場がないと、なかなか発表できないですね。
「やった!」の中身が、充足報告だけでなく、相手への感謝だったりしているのが気づきでした。

  • 羊熊
  • 2011年7月28日 11:26

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